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ILH代表黒部のブログ

コロナ禍、ハワイにいく

私の5人の子供達、長女はファッションPR、次女はグラフィックデザイン、長男はシェフ、次男はソムリエ、三女はコンサルティングとそれぞれに忙しい。特にレストラン関連の仕事をしている長男、次男はクリスマスやお正月など、普通なら家族揃って集える時期が掻き入れどきである。お正月に家族全員が揃うのはここ10年ほどない。
 昨年コロナで日本以上に大変な思いをした次女が言い出した。コロナだからこそ家族で集まろうと。次女の呼びかけに子供達が答えた。場所は次男の住むハワイである。次男がハワイに暮らして10年になるが無一文でハワイにわたりセレクトショップやホテルで働きながらソムリエの資格を取った。大学に行かなかった彼はそれに変わる資格が欲しかったという。しかし昨年ハワイがロックダウンされた時はレストランの職を危うく失いそうになり、皿洗いからデリバーリーボーイ、コックのアシスタント、レストランに眠っていた高級ワインの販売とマルチで働き首をつなぎとめた。兄弟はそんな次男を応援すべくハワイ集合を呼びかけた。コロナだからこそ家族で集まろうと。私も主人も最初は躊躇したが、またいつ家族全員が集まれるかもわからないと思い決心した。
日本からハワイへの渡航は可能である。ただルールには従わなくてはならない。
まず出航72時間前にPCRテストを受ける。この時ハワイ政府が承認した日本の医療機関で英文の証明書が必要となる。費用は¥30、000、中には¥40000ほど請求するところもあるので注意が必要である。この証明書はチェックインにも必要となる。今日本からハワイへの直行便は日系の航空会社が毎日運行している。ところが日系の航空会社はまるで銀行のようにチェックが細かい。私が渡航日の記入を間違えたのだが、一度書いたものは直せないという。また直したところでハワイの入管が入国を許可する確証はないという。
私は『???』と思った。だいたい入国に必要なのはパスポートである。PCRテストは渡航者の健康状態を証明するものである。証明書には検査日時と陰性結果が明記されている。間違えた0と1の数字は直すだけで問題ないと思うのだが、係員は「ハワイ当局に問い合わせなくてはなりません。」の一点張りである。待たされて20分、ハワイの入管から回答がないまま私は係員に言った。「ハワイ当局には私自身が対応します。0と1が間違っていたからと言って搭乗できない理由がない限り私は予定どおりに搭乗します。」係員はブツブツ言っていたが少々お待ちくださいと言って何やら一枚の紙を持ってきた。内容は私がハワイ当局に入国を拒否されても航空会社は一切の責任を取りませんというものだった。ここに至るまで30分無駄な時間を過ごしたと思ったが、航空会社としてもう少し乗客の気分を和らげる対応はできないのかと思った。私は通常DELTAを利用する。太ったおばちゃんやリタイヤーが近いシニアのおじちゃんCAが搭乗しているが、なんともおおらかでカジュアルである。どこの航空会社にも接客マニュアルはあるのだろうが、彼らと話しているとこれからの旅が楽しく思えてくる。これは乗客に対して大切なサービスの一環であると思う。
 ハワイに到着すると、あの証明書の件が頭をよぎった。ちょっとドキドキする。入国はできると思うがホテルに2週間とか言われたらどうしようと余計なことが頭をよぎった。入管の窓口でいつも聞かれるのはハワイに来た理由である。" Family gathering "と一言。係員は微笑みながら" Enjoy!"と言って入国スタンプを押した。私はこの時点から日本のルールから解放されたと思った。日本はルールの国で世界的にも有名だが、ルールのルールだけを見てしまい、時に人に嫌な気持ちを起こさせることがある。ルールを守るのは当然だが、ルールをルール以上にしてしまう日本人が最近増えたようで怖い。コロナのせいだろうか。
 ハワイの街は経済が戻っていた。コロナ禍のワークスタイルとしてのリモートワークが盛んになると、本土から大勢の人が移住して来た。そのため不動産は高騰し、レンタカーは昨年の倍に跳ね上がった。レストランもアメリカ本土からの観光客で溢れ、予約も取りづらい状況になっていた。人々の顔には笑顔が戻り
開放感に溢れている。ハワイのワクチン接種率は高く、一部の若者を覗きほとんど接種は完了している。これはハワイ州だけでなくアメリカ本土も同様である。
昨年あれだけコロナに叩かれ希望を失っていた人々が今間違いなく希望を取り戻している。バイデン政権のコロナワクチン接種対策はものすごいスピードでこの国を元気にしている。
 私は常々政権を管理するリーダーにはスピードが不可欠であると思っている。
また物事の決定に関して、一度公表したら始めと終わりをしっかり見極めて国民を安心させてもらいたいと思う。帰国後飲食業を営むご主人が「日本の行政には私たちに寄り添ってくれているとは思えません。緊急事態宣言は既に3回も伸ばされ、その度に営業時間が変わり、飲酒はダメだという。飲酒は百害ではありません。コロナでも安全を確保しながら友人と会食することで、メンタルの病にかかる人は防げる。コロナはもちろん危険な病気ですが、メンタルな病気にかかったら一生です。時には命を落とすことさえある。こんな側面日本の政府はどう思っているんでしょうか。」ご主人の話は切実さがあった。私も同じことを思う。日本の国民にこれ以上悲壮感を与えないためにも、何をいつまでにどうするかをはっきり公表してほしい。一度公表したら政府は目標に向かって全力で取り組んでほしい。どこの業界に商品の納期を二度も三度も変えるえるところがあるだろうか。約束を二度も三度も伸ばすところがあるだろうか。食堂のご主人は続けた。「日本人だからこんなに振り回されても我慢できるんです。行政からのルールという大義名分に従わなくてはいけない、従わないと罰せられるとみんなが思っている。こんな日本ってありですか。まるで戦争中みたいです。」
 ハワイから日本への帰国は、搭乗72時間前にPCRテストを受ける。今度は日本語での証明書を発行してもらう。費用は¥20、000、これがないと帰国便への登場ができない。さらに羽田で再度PCRテストを受ける。航空会社から来たメールにはおびただしい枚数の書類をダウンロードするよう指示されていた。書類は羽田で計3回にわたり確認される。驚いたのは最終チェックで係員が15項目のチェックリストに一つ一つハンコを押していく。これを何百人もいる待合室の中で一人一人に行う。ここに至っては冗談としか思えなかった。私を担当してくれた係員はハンコのインクが切れてしまい、ほぼ使えない印を機械的に推していた。また日本の入管が設定したLOCATORという位置情報MySOSという体調確認アプリをダウンロードしなければならない。このアプリの説明には各係官が入国者一人一人に行うので大変な時間がかかる。着陸してから税関を出るまで3時間半を費やした。
 こんなことを書いているとコロナ禍にハワイなんぞに行くからと言われそうだが、コロナ禍だからこそ他の国の様子をこの目で見たかった。人々の様子を知りたかった。まだ海外に行けないと思い込んでいる日本人に「大丈夫、行かれますよ」と言いたかった。今の日本は緊急事態宣言という目に見えないルールが人々の行動範囲を極端に規制しているが、そのどこにも海外に行っては行けないとは書いていない。
不思議なことに日本はまだオリンピックを諦めていないようだ。私的意見としてはオリンピックに使われる莫大な費用を、今貧窮している社会に使うべきだと思うのだが、それでもオリンピックをやろうとするなら、開催国として責任ある対応を海外に向けて発信してもらいたいと切に思う。未だコロナの状況が非常に悪いとの評価を国際機関から受けていることを真摯に捉え、日本国民、そして海外からくる人々が安心できるコロナ対策の具体案と実行デッドラインを明確にしてほしい。いつまでもダラダラとした対応が日本の経済の回復を極端に送らせ、海外からも人が来なくなる、さらに経済は悪くなる。
 ランゲージ・ハウスの子供達を見ていると、もしかしたらこの子達の将来は日本より海外の方がいいのではないかという思いが過ぎる。数年前までは私の中にはなかった感覚である。日本はまだまだ大丈夫という感覚を取り戻すにはまず自分が最大限の努力をする以外になさそうである。

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